進出・継続・撤退・再編から見る2016–2026年のグアム市場
この10年間のグアム市場を見ると、日本企業・日本ブランドの顔ぶれは大きく変化しています。かつては日本人観光客を主な顧客とする旅行、ホテル、免税店、ウェディング関連ビジネスの存在感が大きかった一方、近年はグアムのローカル住民や米軍関係者を対象とする小売・飲食、さらに米軍再編に伴う建設・インフラ分野が目立っています。一方で、撤退やブランド変更、所有関係の変更もあり、グアム市場が常に入れ替わっていることも分かります。
この10年の主な動き
| 区分 | 企業・ブランド | 分野 | この10年の主な動き |
| 進出 | DON DON DONKI | 小売・食品 | 2024年、タムニングにVillage of Donkiを開業。グアム市場を直接狙う大型小売の象徴的な進出。 |
| 進出 | DAISO | 生活雑貨 | Village of Donkiへの出店後、GPOにも展開。 |
| 進出 | CoCo壱番屋 | 飲食 | 2025年5月にグアム1号店を開業。 |
| 進出 | 丸亀製麺 | 飲食 | Village of Donkiでうどん業態を展開。 |
| 進出 | 築地銀だこ | 飲食 | Village of Donkiでたこ焼き業態を展開。 |
| 進出 | THE MATCHA TOKYO | 飲食・カフェ | 2025年、Micronesia Mallに出店。 |
| 継続・建設 | 大林組(Obayashi) | 総合建設 | 米軍施設・インフラ関連を含むグアムの大型建設市場で事業を展開。 |
| 継続・建設 | 鹿島建設(Kajima) | 総合建設 | Core Tech等とのJVを通じ、米軍関連施設の建設に参画。 |
| 継続・専門 | OYO Corporation | 地質・地盤・環境 | 建設・インフラを支える調査・エンジニアリング分野で活動。 |
| 撤退 | DFS Guam | 免税・観光小売 | 2026年3月31日にグアムでの営業を終了。日系企業ではないが、日本人観光市場の変化を象徴する存在。 |
| ブランド変更 | Onward Beach Resort | ホテル | Onwardブランドから離れ、現在は星野リゾート リゾナーレグアムとして営業。 |
| 所有関係変更 | Westin Resort Guam | ホテル | かつてレオパレス21が保有していたが、2016年に売却されたと報じられている。 |
飲食・小売 ― 「観光客向け」から「グアム市場向け」へ
2024年のDON DON DONKI開業は、この10年の大きな転換点です。DAISOに加え、CoCo壱番屋、丸亀製麺、築地銀だこなど、日本で広く知られるブランドがグアムで展開するようになりました。こうした店舗は日本人観光客だけではなく、ローカル住民、米軍関係者、韓国・台湾などからの旅行者も顧客となります。日本ブランドが「日本人観光客についてくる」のではなく、「グアムそのものを市場として見る」動きが目立っています。
建築・インフラ業界 ― 米軍再編が生み出す別の市場
観光や飲食とは別に、日本企業の存在感が続いているのが建設・インフラ分野です。大林組や鹿島建設などは、米軍施設や関連インフラを含む大型プロジェクトに関与してきました。基地整備はゼネコンだけでなく、地質調査、設備、資材、物流、車両、メンテナンス、従業員住宅など周辺産業にも需要を広げます。人口規模だけでは測れないグアム市場の特徴が、この分野に表れています。
一方で、グアムから姿を消した・形を変えた企業も
この10年は新規進出だけの時代ではありません。長年グアム観光を象徴してきたDFS Guamは2026年3月末に営業を終了しました。また、ホテル分野ではOnward Beach Resortがブランドを変え、現在は星野リゾート リゾナーレグアムとして営業しています。Westin Resort Guamについても、かつて日本企業が保有していた資産が売却されるなど、所有関係の変化がありました。撤退、売却、ブランド変更を同じ意味で扱わず、それぞれを区別して見ることが重要です。
なぜ企業の顔ぶれが変わったのか
背景には、日本人観光客数の変化、コロナ禍、為替、韓国をはじめとする他市場からの観光需要、米軍関連投資、グアムの人件費・物流費など、複数の要因があります。かつてのように日本人観光客だけを主要顧客として考えるビジネスモデルから、ローカル市場や米軍需要も含めて事業を組み立てる企業が目立つようになったことが、この10年の特徴の一つです。
企業の入れ替わりは不動産市場にも表れる
企業の進出・撤退・事業再編は、そのまま不動産需要にも影響します。新しい飲食店には店舗、小売業には大型商業スペースや倉庫、建設会社にはオフィス・ヤード・資材置場、駐在員を派遣する企業には住宅が必要です。一方、企業が撤退すれば、それまで使用していた店舗、オフィス、倉庫などが新たな市場供給となります。企業動向を見ることは、グアムの商業不動産市場を考えるうえでも重要です。
これからのグアム
この10年間を一言で表すなら、日本企業がグアムから単純に減った、あるいは増えたというよりも、「企業の種類が変わった10年」と見る方が実態に近いでしょう。観光中心の日本関連ビジネスの一部が縮小・再編する一方、飲食・小売では新しい日本ブランドが進出し、建設分野では米軍関連需要という別の市場が存在しています。日本から約3時間半、時差1時間という距離の近さに加え、米国市場であるという特徴を持つグアム。今後どのような日本企業がこの市場に参入してくるのか、不動産の視点からも注目されます。
注:本稿では「撤退」「ブランド変更」「所有関係変更」を区別しています。また、日本ブランドでもフランチャイズや現地法人等による運営の場合があり、日本企業による直接投資と同義ではありません。